聖川皆空参戦

聖川皆空の足取りは軽い。
「是非あなたに話を聞いてほしい」
と連絡が来たときは何事かと身構えたが曰くその者は悩みを抱えているという。
遠い異国の地にも救いを求める者は居る、そして自分を必要としている。その事実はその日のうちに海外へ飛ぶ動機には十分だった。

皆空「電話は子供の声だった。まだ子供なのに救いを求めるほど苦悩するとは…可哀想に…力になれればよいのだが…」

ぶつぶつと呟きながら歩く三メートル近い大男は周囲には異様に写っただろうが本人は至って真剣である。
目的地である家が見えてきた。町を一望出来る高台にある小さな一軒家だ。
数回メモした住所と地図を見比べて確認し、扉を叩く。

皆空「ごめんください」

少女「開いてるよ」

皆空はそっと屈んだ。


中の構造は非常にシンプルで部屋の中央に大きなテーブルが置いてありテーブルの向こうに十代半ばの少女が座っていた。

皆空「聖川皆空、救いを求める者がいると聞き馳せ参じた」

少女「私はカナディア・ウル・クロウリー。今はこの家に一人で住んでるんだ」

少女はころころと笑いながら自己紹介する。とても迷いなど抱えているようには見えない無邪気な笑顔だと思う。
しかし電話越しに聞いたあの声は確かに苦悩する者のそれであった。そんな時

カナディア「早速だけど貴方には聖杯戦争に参加してもらおうと思ってる。拒否権はないからそのつもりで」

突然のことに呆気にとられていると右手に鋭い痛みと鈍い痛みが走る。
見ると手の甲に矢印のような紋章と手首に一周巻き付いたような紋章があった。

カナディア「それは令呪って言ってサーヴァントに対する絶対命令権。手首のは聖杯戦争の参加証みたいなものだよ」

皆空「拙僧を…騙したのかっ」

悪びれることなく続けるカナディアに皆空は手をぎりりと握りしめる。怒りに似た感情が沸き上がってくる。

カナディア「ううん。相談したいってのは本当」

先程とは打って変わって神妙な面持ちになるカナディア。

カナディア「だけど聖杯戦争の参加者を集めるのが私の仕事だから、私情を優先はできない」

カナディア「だから、ね。この聖杯戦争が終わって生きていたら、私が長年抱えている苦悩を打ち明けたい。…だめかな?」

成る程、と合点がいった。

皆空「可哀想に、君はそこで自分ではなく仕事を優先するのだな…相分かった。この聖川皆空、必ずや君の苦悩を晴らすため全力を尽くそう」


カナディア「……ありがとう。それじゃあ細かいルールなんかはこのカードに書いてあるよ。召喚の時にも必要になるからなくさないようにね」

カードとカナディアは言ったがそれは二つ折りになっており開くと大きめの本くらいにはなる。背表紙に描かれているのは魔方陣だろうか。

カナディア「さあ、私は次の参加者に招待状を渡さなきゃいけないからね。次に会うのは聖杯戦争終結後、またこの家で待ってるよ」



家を出る時「生まれてこなければよかったのかな」と聞こえた気がした。
振り向くとそこには誰もいない。カナディアが座っていた場所にはカードの紋様と似たものが描かれていた。

皆空「っ、そんなことはないっ!どのような者であっても生まれてくることに罪はない、罪にしてはいけないのだ!」

必ず生き残る。そう覚悟を決めた皆空はカナディアの家を飛び出した。

  • 最終更新:2018-10-08 09:41:35

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