獣の王は来訪者を待ち侘びる
悪夢を見た────
悪夢を見た────
何度目とも分からない夢を見た
嗚呼…アイゼンシュタイン…フランソワ…そして………
「お父様!!」
息を荒らげて寝台から体を起こす。身体中が嫌な汗で濡れていることから余程魘されていたのだろうことが伺える。────ふと部屋の扉をノックする音がする。
「ミリアルカ様、獣王[ツァーリ]が御身を探しておられました」
「そう。支度したらすぐに向かうと伝えておいてくれる?」
「畏まりました」
ミリアルカは手馴れた様子で身支度をすると鏡の前で自嘲気味に呟く。
「随分と慣れたものね…このロストベルトに来た時はろくに髪もセット出来なかった小娘が」
直後鏡に映ったミリアルカの姿が掻き消えた。
男は玉座の間にて窓の外の月を眺めている。その男は普通の人間では無い。その頭には獣の耳が乗っていて尻尾が左右にゆらゆらと揺れているので一目瞭然である。
男────獣王は玉座の間に来訪者が来たのを感知し耳をヒクヒクと動かす。
「来たか、ミリアルカ」
「私を呼び付ける為に人狼猟兵の隊長を小間使いにするなんて、いいご身分ね」
「王だからな」
獣王は笑いながら玉座に座ると膝で頬杖をつく。
「カルデアは今日来るのだろう?」
「ええ、確かな情報よ」
その言葉に獣王は牙を見せて獰猛な笑みを浮かべる。
「クハハ!この地に召喚された野良英霊共を駆逐してから早1年。漸く来たか!!
ミリアルカよ、宣戦布告は其方に任せるぞ」
「…分かったわ」
獣王の大声に顔を顰めていたミリアルカが振り返り数歩歩き、消える。そしてそれを見届けた獣王は表情を引き締め
「さて…カルデアが余[オレ]の眼鏡に適うと良いのだが」
- 最終更新:2019-12-21 04:18:35