幕間「現地プロデューサーaの嗚咽」

aはトイレにいた。こういう大型の船についているトイレは海に垂れ流すのではなく、貯水タンクに貯め陸地で処理するものであるため、トイレに塩の香りは望めない。よくある甘ったるい芳香剤の臭いが充満しているだけだ。
そしてそれはaの吐き気を促進するものだった。
おえぇ、と大の年をくった男がえずく汚いおとが聞こえ、ジャーと流す音が狭いトイレに響き渡る。それが一つならまだしも両隣からも似たような音が聞こえてくるのだからたまらない。さしずめ悪夢の三重奏といったところか。

しかし、この状況も先程の悪夢には及ばないだろうな…とaは一人回想する。

先程バーサーカーとランサーが邂逅し、戦闘を開始。さてあの暴力が形を成したようなバケモノ相手にどう立ち回るものかとランサー陣営をみていればどうやら霧で撹乱をすることにしたようだ。tv的には暗視にせざるを得ず少々困るが、この番組の売りは大会参加者達の生のドラマである。自由性を縛るわけにはいかない。
しかし、霧は晴らされ、そして悪夢が見えた。
いったいアレはなんだったんだろう。一言で表現するなら、そう、『冒涜的』。この言葉がふさわしい。
怪しく赤黒く光輝く虚ろな目玉。溶けて地に落ち行く皮膚。そしてナニよりもまるで得体の知れないところに繋がっているかのように暗く、重く、なにも見えない巨大な口。
どれをとっても此方のモノではなく。彼方からなにかの間違いで這い出てきたようなそんなモノだった。

まあそんなわけで、内陸そだちの平和ボケしたお坊ちゃんな俺ではそれを見た精神的苦痛に絶えられずに吐いたって寸法だ。今まで何回か聖杯戦争showを監督したがあそこまでここにいることが明確に間違いだと感じさせ、吐き気を催させるものは見たことがない。
そしてはじめて魔術師スタッフを頼もしく感じた。あいつらも多少なんというか恐れとはまた違う驚愕?で顔が青くはなっていたが冷静に機材チェックを進めてくれている。やはり世界が違うのだろう。

世界が違うと言えばあの少女もだ。この船で出会ったときは人畜無害そうな顔をしていたが、まさかあんなものを身体に飼っていたとは…はんぶんゆうれいとはあんな恐ろしいモノだったのだ。アレ?……マテヨ?……モシカシテ……

ふと船内でもしあのとき彼女が泣き出して癇癪のままにアレを召喚したらどうなっていたんだろう、という思考にいたった彼はあのときのあまりの綱渡りっぷりを把握し、また吐いた。

  • 最終更新:2018-08-01 22:23:46

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