太公望

太公望451.jpg
【CLASS】セイバー
アーチャー(対魔力A(EX)・単独行動EX)/ランサー(対魔力A(EX))/ライダー(対魔力A(EX)・騎乗A+)/キャスター(陣地作成A+・道具作成A)
【真名】太公望
【性別】男
【身長・体重】177cm・69kg
【外見】
不要な手間と定め、無造作に視界を確保できる程度に整えた髪。
睨めつける火眼金睛(炎を連想させる、金色の虹彩を備えた赤い眼球)の眼光。
血の通わない冷徹そのままが形になったかのような鉄面皮で、美貌の青年。常に万物万象を見下し、睥睨している。
頭巾状にして被った帯布、留め紐の代わりに革製のベルトを使用した道服の上に、腰には二重の異なる色の裳(スカートのようになる腰巻)で留めた抱肚、肩掛けの外套を身に纏う。
【出典】史実、封神演義
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:B+ 幸運:EX 宝具:A++
【クラス別スキル】
○対魔力:A(EX)
「杏黄戊己旗」という外見はただの旗だが、地に突き立てれば高さ二丈となって誰も抜き取る事が出来なくなり、無理に抜こうと試みれば身体が動かなくなる。
敵の仙術を無効にし、邪悪な気を鎮圧する働きがある。いかに強力な宝貝(パオペイ)であろうと邪気を孕むのであれば、直前で停止させる魔力制圧の結界。
○騎乗:A+
「四不像」の姿は麒麟の頭で獬豸のような尾を持ち、体は竜に似るとされる幻獣。元始天尊から賜った乗騎で、五色の雲に乗って飛び、どんな妖怪も恐れないと言う。「不像」は中国語で似ていないという意味なので四つの生物と異なるという意味になる。かつては元始天尊の乗騎であったという。

【固有スキル】
○鋼鉄の決意:EX
勇猛スキルと冷静沈着スキルの効果も含む複合スキル。
痛覚の全遮断、封神結界による固有時制御の強引な超高速移動(遁術の一種)にさえ耐えうる超人的な心身などが効果となる。危機的な状況であっても逆転のための策を立案し実行することができる。通常四百年かけて習得する道術を四十年で会得できたのは、真人ではないにしても人間としては十二分に規格外な天才である以上に、この毅然として苛烈な精神性の影響が強い。

○軍師の戦略:A+++
「知勇の将など手玉に取るようなものだ。しかし、左道の士は御し難い」
軍師系サーヴァントに与えられるスキル。中国が武経七書の一つ『六韜三略』を著した戦略戦術と、道術を組み合わせた太公兵法の集大成とも云うべきもの。俗に兵法の奥義、奇門遁甲。
黄帝が蚩尤との戦いの最中に天帝から授けられたとされている占術「奇門遁甲」によって、明確な方位を基準にして勝利を得たというのが起源とされている。式占、呪術、兵法を兼ね備えた特殊な魔術系統で、運命を読み取り、凶運を吉運へと好転させる事を目的とする道術。黄帝とその配下風后の『握奇経』『風后八陣兵法図』から始まり、五陣、握機陣、丘井の法となり、殷の終わりには太公望の『太公兵法(六韜三略)』で太公陣へとよりその時代に即したものへと改良されていったという。
漢の軍師張良は黄石公から『六韜』を教えられ軍師の道を歩んだ。唐の名将李靖による『李公衛問対』においては太公望が黄帝の兵法を受け継いだと言及されている。
「太宗曰、 深乎、 黄帝之制兵也。後世雖有天智神略、莫能出其閫閾。降此孰有継之者乎。
靖曰、周之始興、則太公実繕其法、始於岐都、以建井畝。戎車三百輛、虎賁三千人、以立軍制。」

○武の祝福:A
「以鏡自照者見形容(鏡で自分を省みると容姿が分かり)、
以人自照者見吉凶(人を通して自分を省みると良し悪しが分かる)」
『太公陰謀』に曰く――
中国史上最初の“武聖”、『武成王』姜子牙。武神であり、智神であり、「太公在此、百无禁忌(太公望が此処に在る限り、全てが許される)」革命の神。
唐の太宗李世民が即位した当時の唐王朝は外国勢力が侵略し、内部問題が残り、政治状況が混乱していた時期であった。そこで彼は“安人理国”安寧秩序を成し遂げるため、太公望の化身を名乗ったという。玄宗以来、設立された太公望廟は徳宗の時代に、『武成王』に封じられて武成王廟となった。脇侍は古今の名将で、時代によって多少の変更があるが、武廟十哲と武廟六十四将として名立たる古今の名将が名を連ねている。明の太祖は、太公望を王ではなく名臣として扱うことにしたため武成王廟の祭りを廃止。関羽が武聖と呼ばれるに至る。
北宋の儒学者司馬光は『文宣王』孔子と同格に祀られている『武成王』姜子牙に対し痛烈に批判し、「もしも太公望に魂があるならば、孔子と同じように祀られることを、必ずや羞じるだろう」とさえ言い切った。だが本人は見ての通り合理主義。儒学という「綺麗事で世は治まった例はない」と、鰾膠も無く一蹴する。唾棄すべき、理想ばかりで実行力の持たない者こそ太公望の敵である。
セイバーとしての剣術のみならず武芸全てに秀でていることを示すスキル。これにより宝具に近い威力を持つ槍、弓、設備、仙器械・宝貝(パオペイ)を問わず所持また使用可能となる。特に太公望は気功のみならず呪法と霊圧の扱いに優れ、たとえ剣撃のみを防御できたとしても精神力と生命力を削る、打神鞭ならぬ「打神術」を編み出している。

○千里眼:EX
「袖裏乾坤大(森羅万象を袖裏に包み込んで、過去と未来を知る)。」
「壺中日月長(万象の来し方、往く末を掌握するがゆえに、日月の運行する如く狂いはない)。」
距離と時間を超えて、太公望の千里眼は過去と未来を見通すという、最高位の魔術師“監視者”の証たる“世界を見通す眼”。対象の真名や宝具はおろか、幾重に隠された真実さえも一瞥で見通してみせる。常時発動しているような状態ではあるものの、混線を防ぐため意図的に制限している節も見受けられるが、『文王拖車』の逸話のように歩数で王朝の寿命を正確に図るという伝説的な一幕を垣間見せる。
一日に一度、霊壇で瞑想状態となることでGMから直接情報を一つ聞き出せる。GMは情報の重要性やPLの妨害措置などを鑑みた上で拒否することも出来る。この間は完全に無防備となるため基本的には使用されない。そもそも太公望には不要という説もあるが、優れた戦略家にとっては千里眼を弾く相手がいる、という情報すらも有益に変える。

妖怪変化などという無明、容易く払って見せようか――

【宝具】
『封神演義』
ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:500
「世界は融通無碍、霊子のまにまに。汝が三魂七魄に封神の勅を下す――封・神・演・義っ!」
元始天尊自らが製造した、テクスチャを縫い付け繋ぎ止めている聖槍『封神榜三百六十五位正神台』の真名解放。
天界・仙界・下界という三つの世界の正名(名実を一致させ)純化によって、それに溢れた超抜種を封じる神界の創設という、新しい公理系の宇宙(テクスチャ)の再編成「封神計画」に由来する宝具。封神榜に記された真名は総数365とされているが、仙界の候補者と易姓革命で命を落とした優秀な武将高官以外の、約半数は空白であり、随時記入される形となっていた。
水平線の彼方、世界の果て(中央)に立つ塔。世界の裏側の最果てにて輝く塔。封神台という聖槍の在り方がカタチとなった本来の姿である『塔』と、打神鞭=封神榜というその塔が地上に落とした影、塔の能力・権能をそのまま使える個人兵装としての『槍』の二つの姿を持っている。

陣の要となる核、仙界の宝貝(パオペイ)である『封神榜三百六十五位正神台』の子機『打神鞭』は二十一節に四道の符印が施され、最大で八十四ブロックの結界の最小単位「方陣」と、複数の方陣を使用することで相互作用に強度を上げる「符陣」を形成可能。365の真名の内84に限り、封神された神を結界という形で降ろすことができる。
「九天応元雷神普化天尊聞仲、疾っ!」
人間の精神を打ち据え、仙人の頭を打ち割る力があるというのも打神術の本質が物質的な干渉力ではなく概念的な干渉力をもつ結界だからである。実体化させることで、例外的に物理的なものとして、宝貝(パオペイ)の製造に使われる神珍鉄の強度を得る。

指定の空間を自在に区切った立方体の結界を兵士と見做し、組み替えることで陣形を成す。
黄庭経三巻(内景経、外景経、遁甲縁身経)の道術によって結界内の構成数値を操作することで、気象現象を発生させ、それを以て戦車や騎馬、歩兵、強弩、戟、大楯、矛と楯などの用途を成す。三昧真火による火計や、水で覆う倒海の術による水計、岐山狂風による極寒の凍結、落石、台風などの自然を軍備に見立てるのである。だが、その本質は空間そのもの。転移転送、屈折、変化(楊戩の九転の玄功の再現)、内部の固有時制御などもお手の物という攻守ともに隙のない万能結界。相手側が陣内に侵入するという前提を用意することで、回避は不可能。魔術師からすれば工房を常に持ち歩いているに等しい。
魂の名前というある種の真理である真名を入手、知り得ることで打神鞭に記入して初めて、サーヴァントに代表される概念防御・伝承防御を無視して直接干渉することが可能となる。真名を手に入れれば絶対の封引力を有するが、真名という形式に縛られるため対人戦において情報の駆け引きが発生する。能力を知られるのを防ぎ、より効果的な局面で活用するためには軽々しく使うべきではない。“一度目は使えたが、二度目は使えなかった。ならばこれは敵の術だ”という連想を防ぐためである。使うならば、倒せると確信した上で不意打ちであろうと太公望は定める。

「太公書云、地方六百歩、或六十歩、表十二辰。」
地面を一辺三百歩四方の正方形に区切ることで、兵士はそれぞれ二十歩四方の土地を受け持ち、横には五歩、縦には四歩の距離で一人が立つ。その総勢二千五百人を東・西・南・北・中央の五カ所に分けて配置し、四カ所を空地とする。これによって、陣の中に陣を入れる形となる。武王が紂王を征伐した「牧野の戦い」のときには、任命した指揮官にそれぞれ兵三千人を指揮させ、東・西・南・北・中央の各陣にそれぞれ六千人、合計三万人が布陣した。これを以て「太公画地の法」と呼ぶ。空間に敷かれた陣地を升目状に認識するのである。そして『封神演義』では状況に合わせて一字長蛇陣、二龍出水陣、三山月児陣、四門斗底陣、五虎巴山陣、六甲迷魂陣、七縦七擒陣、八卦子母陣、九宮陰陽陣、十代明王陣、天地三才陣、包羅万象陣を展開するのである。

「九曲・封神演義」
出入門戸(出入りに門戸あり)、
連環進退(されど進退連環して)、
无究无尽(果てるところなく)、
井井有条(井々として条を有するも限りなし)。
九曲黄河陣。感応随世仙姑正神三霄娘々。
九曲の符陣の中では、仙丹(魔力炉心)は惑わされて効かず、仙訣(魔術回路)は閉ざされて効を失うことになる。故に仙人の神(働き)を削ぎ、仙人の魄を消して、その形を陥し、その気を損ねて、その原本を喪わせる。陣内に落ちれば「頂上の三花(道法の根帯)」を削られ、「胸中の五気(道術の源泉)」を殺がれる。つまり天門を閉ざされ道果を失い、凡人に戻ることになる。仙人であろうとも陣に入れば凡人と化し、凡人が入れば絕命する。
黄河の戦陣の中では、かつては六百の屈强な軍士が選りすぐられて、演習を経て陣内での行動に習熟した。召喚された六百の霊体を百万相当の雄師に変える。
九曲は曲中に直なく、曲は造化の奇を尽くして仙術を抉り出す。黄河は天地の妙を地形に蔵して生死の機関を秘める。黄河は群小(兵士)を吞み、海に流して跡を残さず。人海(戦術)にあえども憂いなし。つまり九曲黄河陣は、いかに道行の深い上仙でも破れず、あらゆる軍勢が一度に押し寄せても、踏み潰すことは出来ないとされる。
陣内の使い魔の能力は向上するが、自身と他者は完全に魔術回路を停止する。つまり、使い魔と結界の維持コストを魔術回路が停止した自身が支払わなければならない。

「太極・封神演義」
太極図。
陰雲棚引いて悲風颯々、冷霧飄々として鬼哭神号せし符陣。陰陽五行を超克したその空間は、陰陽五行の原理と運行の精髄を組み立てた道術を、歯牙にもかけない。
展開できる全ての結界を纏め上げてようやく使えるようになる絶技。乾坤(天地)を開き、陰陽を分かち、四象を治める事が出来る、太上老君の宝貝。一切の空間を任意に組み替える仙界最高の秘法にして至宝。すなわち、世界そのものを操り、この世にあるどのような物でも打ち負かす力を秘めている。
結界内部を繋ぐ虹のような架け橋、金橋の影は、杳々冥々として前後左右もなければ長さも幅もない、時空の消えた空間。虚数空間に変換し、世界とそこに存在する生命体を低次元の存在にランクダウンさせる封神結界。内と外の概念を入れ替える鏡像結界であり空間ごと握り潰し、抹消焼却することで飛灰と化す。この絶技で手が付けられないのは大鵬金翅鳥を原形とする羽翼仙のように収まりきらない巨体だけである。

『闕(かけたるもの)』
ランク:EX 種別:対人/対国宝具 レンジ:不明 最大捕捉:600
「宝貝、転身(まわれ)!」
闕剣。
『荀子』の性悪篇に曰く、「桓公之蔥、太公之闕、文王之錄、莊君之曶、闔閭之干將、莫邪 鉅闕、辟閭、此皆古之良劍也(桓公の葱、太公の闕、文王の録、莊君の曶、闔閭の干将、莫邪、鉅闕、辟閭、これらは全て古の優れた剣である)。」と書かれている。
打神術の氣功を伝える硬鞭「封神榜三百六十五位正神台」こそ、この剣の鞘代わりに開発された仙器械に過ぎない。打神術・斬仙飛刀。またの名前を封神斬将飛刀という、陸圧道人より伝授された道術の無窮にして玄中の妙。氣功が錬られた刀身に鏡のように入り込んだ対象を捉えることで、映し出された対象を切断する。技量を超越した、だまし絵のように時間・距離・概念を飛び越えて、魂を捉えて逃さない照魔鏡。

太公望はこの奥義をもって借体成形を修めた妲己の原形、魂を捉えることに成功し討伐。三妖の魂を闕剣に封じ込めた。だが宝剣は、傾城傾国の魅了の魔力を備え、意思を持ち会話をする妖姫の魔剣と成り果ててしまった。魔光によって相手を魅了し、短時間ながら意のままに操ることが出来るという暗示、相手の五感・霊感等を支配し、対象を誤認させることが出来る完全催眠や、行動や運動を禁止することで拘束する金縛りを可能であり、「停止」の最上位である「石化」に等しい。魅了によって石化されたものを飛刀で砕く、というプロセスに変化しているのである。その本質は、有機物無機物の枠組みを超えた“思い通りに動かす力”というものであり、その吐息だけで“(刀身に映った)魅了させた物体を弾け出す”という形で一画を更地にする。自然現象すら魅了してしまう、その魔力は雲や風、四方を覆う霧靄は白昼を闇にし、大雨となり石砂を飛ばす瘴気を発し、城を超え、国を覆い尽くすほどの呪いを撒き散らす異常気象となる。

 混沌初判分天地(混沌が分かれて初めて天地が生まれ)、
 両儀四象傳生意(両儀は生き生きとして育まれ四象として伝わる)。
 聖人中出三才備(聖人の中には天地人の三才が備わる)、
 継天立極傳万世(天子すらも支配して万世の頂点に立つ)。
「何度、滅ぼそうとも蘇ってみせるわ」
「何度、蘇ろうとも滅ぼしてみせよう」

【Weapon】
【解説】
姓は姜、氏は呂、名前は尚、字は子牙、号は飛熊。これから転じて呂尚、姜子牙などと称され、一般的には「太公望」と呼ばれる。この別名は、一般的には渭水で釣りをしていたところを文王が「これぞわが太公(祖父)が待ち望んでいた人物である」と言って召し抱えたという話に由来する。
周の丞相。黄帝が風后を将に拝した伝統に倣い、奉天征討掃蕩成湯天保大元帥、東征大将軍に任命された、中国兵法の祖とさえされる世界初の軍師。最初は商人として生計を立てようとしたが上手くはいかず、嫁にも逃げられてしまう。その後は身一つで周に赴くが、推薦者がいなかったため、毎日のように釣りをしてその時をじっと待った。時は流れ、西周伯・姫昌こと文王が、狩猟に出た時、ついに二人は邂逅し、文王は少し話しただけで太公望の非凡さを見抜き、周の丞相に彼を据える。太公望はその後、瞬く間に軍を増強し、諸侯の協力も取り付け、牧野の戦いで殷の紂王を大いに破った。この功績によって斉の地に封じられ、姜斉の祖となる。斉太公となった姜尚とよりを戻そうと、元嫁が言いよってきたという逸話が存在し、これが「覆水盆に返らず」のもととなっている。
兵法書『六韜』『三略』の著者であるというのは後世の創作という説があるが、斉国の司馬穰苴が著した『司馬法』は太公望以来の兵法を纏め直したことに由来する。そのため俗に六韜三略そのものでないにしろ、類するものはあったとされる。唐の粛宗からは武の代表として武成王の称号が贈られ、文宣王孔子とともに文武廟に祭祀された。
明代には有名な小説、中国の三大怪奇小説の一つ『封神演義』の主人公として、闡教が崑崙山玉虚宮において、元始天尊の直弟子である道士として登場している。封神計画のため、七十二歳の時に下山。時の皇帝紂王の后妲己のせいで荒れ果てた商を滅ぼして、元始天尊から授かった封神榜を完成させる。その功績によって兵法の神として祭られる様になり、姜太公とも呼ばれる。一説によると太公望が死んだのは二百年後であるとされ、埋葬の際に棺桶をあけて見ると死体が消えていたと言う伝説が残っている。


【人物像】
「どちらにせよお前たちに先はない」「赦せ、推し通る」
知的であるよりも勇敢さが前に出る、前線型軍師。
強固な意志、強靭な魂。概念防御、きわめて強力な結界を実体化させることで、例外的にこれを物理的なものとして、概念防御を有した宝貝(パオペイ)を形作る神珍鉄に等しい、無敵の鎧をこそ身に纏う。文字通り、鋼鉄が如き――男。
「比干殿下、奴らの中で酒に一番弱い者を見つけて思いっ切り酔わせて下さい」「後は全て卑職(わたし)がやります」
やれば解決できる。そして自分はその手段を実行できる。だから――やる。普通なら99%失敗するようなことも彼なら成功する、という手段を取り続けるので周囲は気が気ではない。無自覚にアクセルを踏んでいく男。悪逆非道を芋ずる式に暴くために見逃すならともかく、今滅ぼせる邪悪を見なかったことにする理由がどこにあるのか。
「徳は身を飾るものではない。人の死を免れ、難を解き、患を救うためのものだ」「ただ天子であるというだけで暗君に従うのならば、それこそ家畜の所業ではないか」
計画的に戦いの下準備を余念無く行い、人間らしい行為を愚かと断じる合理性を重んじる感性の持ち主であるが故に、使命を遂行する事のみを己の存在理由とする機械的な人物。人の色恋すら軍略の歯車に変える。一方で、軍を動かすのに数値上では測れない士気や、漠然とした忌避感を解消し精神論を味方につける占いの類なども採用する。これは効率的な運用には必要な要素であると理解しているからである。
「降伏も恭順も和平も交渉もない」「おまえたちが絶滅したとそう認識できるまで、痕跡だろうと根絶やしにして禍根を一掃する」
戦いにおいては一切の妥協・慢心を許さず、普通なら問題ないと片付ける敵の取りこぼしや不確定要素に対しても決して手を緩める事はない。徹底的な殲滅砲火をしながらも、死骸が確認できない事を理由に生きていることを前提とした行動を開始するという細心の注意を払う念入り様。統率された軍備を一枚岩の組織のごとく運用させ、敵対勢力の一挙一動に対して有効な戦術をその都度組み立て苦しめるという、指揮能力を遺憾なく発揮する。
「それはお前が叶える夢だ」「自分でやってみせろ」
また、“任務を遂行する”という事に思考を置き過ぎているため、無関係の存在や管轄外の事柄に関しては殆ど関心を持たない欠点も存在する。それ故、与えられた指示を的確にこなす分、管轄外で発生したハプニングはわずかなすれ違いであっても一切責任を負う事はない。余分なものは余分なもの。必要以上の責任を負うのは領分を超えている。
「零れた水が器に戻ることはない。失われた命は回帰しない」「何が愉しい、何が面白い。命を何だと思っている」
この地上から仙道を一掃する封神計画の実行者である彼は、必要最低限の犠牲しか許容しない。紂王を誘惑して暴虐非道の限りを尽くす妲己、その跳梁の背後にある女媧の介入を悟った時、自分がこの世に生まれた訳を理解した。より正確には己の使命・存在意義を定義したのだ。この世はありとあらゆるものが美しい。ただ、その美しさを穢す一点の汚れ“実在する神”である超抜種、領分を超えて跋扈する神仙が、この美しい世界に存在しているために、容易く踏みつけるにされるものがあるならば、と。
アラヤの抑止力を背景とする人間出身の仙人・道士達からなる崑崙山の闡教と、それ以外の動物・植物・森羅万象というガイアの抑止力に由来する截教という仙界の二大派閥は、抑止案件である寿仙宮に巣食い、姫昌の脱出で抑止力に捕捉された、殷王朝の天数が尽きた瞬間にビーストへと羽化せんとする“人類悪”妲己への対処方針の違いで対立することとなった。
直接的に、妲己を滅ぼそうとするガイアの抑止力。
間接的に、易姓革命という手段を取るアラヤの抑止力。
この二つの抑止力の方向性の差異は、截教の教主・通天教主が敷いた符陣「万仙陣」に闡教の元始天尊、その兄弟子である太上老君、仏教の準提道人と接引道人が挑むという形で結実することとなる。
「さあ、どうだろうな?」「道術というのはな、頭をバカにするための術なんだよ」
時として邪魔な味方を排除するために敵を利用する、合理性の極みのような人物ではあるが、その自身の本性について認知されてしまうと人心が離れることを知っているため、隠蔽するように振る舞う。そのため、パフォーマンスとは信じられないほど、私生活は破綻している。世話人がいなければ書類である竹簡の山で埋もれた書斎で寝泊まりするような(「内容も場所も全て把握しているから問題ない。証書として価値があるから、棄てられないだけだ」)ゴミ屋敷同然に早変わりする。そして、その方が軍師“太公望”として神秘的だろうと嘯く。もはやただの言い訳である。
「こ……この天才めッ!」
「仲琳は私を師匠と敬いはするが、奴の道と術は既に一致していた。奴は生粋の仙道だ」
許仲琳へ。千載の功夫すら凌駕する規格外の才覚には、さしもの太公望と言えどもその鉄面皮を苦々しく歪ませる。だがそこに怨毒はなく、むしろ誇らしさすら感じさせる。


――釣りをお楽しみのようですが、それでも、魚は釣れますか?
後の周の文王となる、姫昌は渭水に釣竿を垂らしていた太公望と出会う。このときの太公望の針は真っ直ぐだった。釣針ではなく縫針を、それも水面から三寸ほど離していた。
歇后語では、甘んじて罠にかかる例えとして「姜太公釣魚、愿者上釣(太公望の魚釣り、自ら望む者が釣られる)」がある。釣りの腕前など無くても、太公望ほどのカリスマ性の器ならば自ら進んで釣られに行くという。
「君子はその志を得るのを楽しみ、小人はその事を得るのを楽しむ。今、私が漁するのはそれに甚だ似ている。お前は、どう思う――姫昌?」
太公望は大物が釣れたと、微笑んだ。

【NPC】怨霊妲己
【脳内CV】福山潤氏(『アサシンクリードオリジンズ』バエク役)
【制作】ここのえ
【レンタル】可
【NG表現】史実の太公望姜子牙を貶めるような表現。
太公望_裸_.jpg

詩号・四念白(候補


天斉至尊


  • 最終更新:2020-09-05 19:07:44

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