偵察:アサシン陣営、動く

 どうにか工房の作成が終わった。
使い魔避けの結界と、土地から魔力補給する機能に、侵入者の気力を減退させる術式。
更に、強度と引き換えに起動するまで透明化する鎖型魔術礼装のトラップも仕掛けた……これなら、逃げる時間を稼ぐ事は出来るはず。

「昼飯はホットドッグにでもしよう……あっ、ウインナー買い忘れた……疲れたし具は冷蔵庫にあるレタスとタマネギとトマトで良いか」

 さてと、アサシンは管理者の屋敷に偵察か……。



 来栖市の管理者にしてマスターを利用して聖杯を得ようと企む魔術師、檜葉靖彦の屋敷への侵入は成功した。
厨房や裏口等、使用人がよく使うエリアは魔術による警備も薄く、本職の暗殺者等でない俺程度でも楽に侵入出来た。
しっかし、窓から一度だけ顔を見れた檜葉という奴は、もっと下らん企みを抱いたろくでもねえ奴にしか見えんぞ。
戦士としての力量や才能は低いが、何か切り札を持ってそうだし……何より卑劣な目つきが気に入らねえ。
とはいえ、土地の管理者は運営に協力する事になっているのもあるが、それ以上に何等かの切り札を持って待ち構える奴に見つかるのは危険だ。
これまでの観察結果からして此処に小聖杯があるのは間違い無いだろうが、警備の濃いエリアを探索すれば見つかるのは避けられそうにない。
と、此処で俺はあるものに目を付けた。

『マスター、眠り薬だ。それか、殺さず
に動きを封じれる毒とか無いか?』

 目を付けたのは、紅茶とかいう飲み物と付け合わせの菓子……聖杯によるとマロングラッセと言うのか。
まあいい、大事なのはそれがこの屋敷の主に出される飲食物だという事……これに一服盛れば屋敷の探索は楽勝、小聖杯を最初に手に入れるのは俺達だ。
という訳で、俺はマスターからの返事を待っていたが……。

『えっ、ごめん。そういうのは持ってない』

 そうそう美味い話は無かった。

  • 最終更新:2019-06-30 19:49:49

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