アーチャーとランサー陣営「停戦と怪物」


 「あら、貴方の実力はこんなモノだったかしら? 先程の威勢のいい態度はどちらへ? 」
 多数のゾンビや分身に紛れランサーの攻撃が『エンペラー』へ襲い掛かる。受け流し、次の攻撃へと繋げようとすればその姿は霧へと変わり肝心の攻撃は空を切る。
 「厄介な術を使うではないか、蝙蝠の貴人よ! さぞ、この戦いの前にも同じ術で数多の陣営を翻弄したのであろう? 」
 その言葉にランサーの表情が何かを思い出したように固まる。
「……ええ。ですが、あの陣営にはさすがに恐怖を覚えましたわ……。忠告しましょう、あの陣営、おそらくバーサーカー陣営は脅威となるでしょう」
「ほう、蝙蝠の化生である貴様でも手こずる相手か……、ではこの戦いはここで一度やめとしようではないか」
突然の休戦宣言にランサーと司馬中人が固まる。それと同時に司馬中人はその休戦の意図を理解した。
これは戦力の温存である。強大な力を持つであろうバーサーカー陣営に対抗するには数が必要である、ましてや一度交戦の経験があるランサーを今ここで脱落させてしまうのは悪手であると判断したのだろうと。
「さて、どうするのだ蝙蝠の貴人よ? 余のこの宣言を貴様は受け入れるか? 」



皇帝を名乗るサーヴァントからの突然の提案に、一時思考が停止する。この乱戦の最中、何を言いだしているのか。
「……どういう意図か聞かせていただけませんか、皇帝陛下。二重の同盟でも結ぶおつもりですの?」
「いや。貴様が恐れるほどの相手だと言うならば、それを下す為の戦力をむざむざ減らす事は無かろうさ。同盟ではなくバーサーカー戦に限った共闘、休戦と言った所か」
「……そう、随分と視野が広いこと。けれどわたくしは怪物ですわよ?簡単に信用するのは危険だと言っておきますわ」
「なに、その時は余と同盟者の手で以って叩き伏せるまでよ。とにかく、余はバーサーカーを下すまで、貴様との休戦を所望する。答えを聞こうか」
絶対の自信を持った声音。そして確かに、断る理由も思いつかない提案。
「ーーーとても魅力的な提案ですわ。けれど、アイにも話を通しておきたいと思いますの。よろしくて?」
皇帝は首肯で答える。アイと念話を繋ぎ、思考を送る。
『アイ、今よろしくて?』
「ああ、ランサー」
肉声で、答えが来た。声の方向を向くと、霧の中に人影が写った。体格や服装からアイだとは思いますが、その足取りと気配には、僅かな違和感があった。
「アイ?」
名を呼んだ瞬間、弾けた。
ドンッ!という力強い踏み込みが爆発し、エンペラーへ向けて突きが放たれる。エンペラーは身を逸らして回避。
「どうした、貴様」
「ふふ、何がですか?あなたの剣、素晴らしい逸品ですね。ワタシに譲っていただけませんか?」
妖艶な笑みと息遣いでそう語るアイ。その姿は、わたくしの知る彼女とは似ていても違った。
「生憎だが、それは聞けん願いだな」
それを聞いたアイは、更に愉しげに次の攻撃を繰り出していく。

  • 最終更新:2019-02-16 17:57:21

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